研究内容

希土類系銅酸化物超伝導体の高速作製技術の確立

希土類系銅酸化物超伝導(REBa2Cu3Oy : REBCO, RE = Sm, Y, Gd等の希土類元素)線材の低コストのため、”線材作製高速化技術の確立”を目的として研究を行っています。REBCO線材は様々な結晶成長手法を用いて作製されますが、私はVapor-Liquid-Solid(VLS)成長法と呼ばれる手法に注目して研究を行っています。

ここでは超伝導の基礎知識の紹介と共に、現在私が行っている研究について簡単に紹介します。

低温超伝導体と高温超伝導体

超伝導体は”直流電気抵抗がゼロ”という特徴により、強磁場を発生させることが可能です。この特徴を用いて医療現場ではMRI、輸送現場では超伝導リニア等に応用がされています。

これら応用機器においては、低温超伝導体(Low Temperature Superconductivity : LTS)の一種であるNb-Tiが幅広く用いられています。LTSは延性・展性に富み線材加工が容易なため、安価なコストで作製が可能ですが、超伝導転移温度Tcが20 K以下の物質を多く占め、冷却時高価な液体ヘリウム(沸点 : 4 K)を用いることが不可欠であり、運用コストが高いといった欠点があります。

その一方、1986年に発見された高温超伝導体(High Temperature Superconductivity : HTS)の一種であるREBCOはTcが90 K程度の物質を多く占め、冷却の際安価な液体窒素(沸点 : 77.3 K)の利用が可能です。

そのため、運用コストの大幅な削減が可能であり、エネルギー分野応用に際して非常に有能な超伝導体であると言えます。しかし線材加工には高い技術が必要なため、線材作製速度が遅く、作製コストが高騰しているのが現状です。

REBCO線材の作製手法

REBCO線材は金属基板上にREBCO薄膜を成膜することによって用いられています。REBCO線材作製の際に用いられる結晶成長手法を以下簡単に紹介します。

  • Pulsed Laser Deposition (PLD)法
  • Metalorganic Chemical Vapor Deposition (MOCVD)法
  • Metalorganic Decomposition (MOD)法
  • Reactive Co-Evaporation (RCE)法
Fig. 各国の線材作製状況一覧

多くの企業が様々な手法を用いて線材作製が行われていますが、現在の作製技術において、製造スピードが非常に遅くその点がREBCO線材の高コスト化に繋がっています。

Vapor-Liquid-Solid(VLS)成長法

そこで、私たちはは製造スピードを向上させるため、新たな作製手法として”Vapor-Liquid-Solid(VLS)成長法”と呼ばれる手法を導入してREBCO線材の作製を行っています。VLS成長法は“固相”、”液相”、”気相”の三態を用いた結晶成長手法です。以下簡単に作製方法を紹介します。

Fig. VLS成長法の結晶成長過程概要図
  1. エキシマレーザー(KrF)をREBCO焼結体に照射し、REBCO原子を金属基板上に堆積させる(この過程はPLD法と同様)。この堆積した層を”固相”と呼ぶ。
  2. 別の焼結体( Ba3Cu7O10 )を用いて、固相上に融解したBCOを堆積させる。この層を”液相”と呼ぶ。
  3. 液相を介して、気相からREBCO原料を供給し結晶成長が発生する。

このVLS成長法は通常の気相成長法と比較し、低過飽和度で結晶成長が行われるため、製造スピードを増加させても良好な結晶配向性を有する線材作製が可能とです。

私たちははこのVLS成長法を用いて線材作製高速化技術の確立を目的として日々研究を行っています。