Vapor-Liquid-Solid tri-phase epitaxy of RBa2Cu3Oy single-crystal films

K. S. Yun et. al., Appl. Phys. Lett. 80, 61 (2002)

この研究が行われた目的

この論文では単結晶に匹敵する薄膜作製を目的として、PLD法とLPE法を組み合わせたVLS成長法(本論文ではTPEと表記)を用いた手法を紹介している。

単結晶に匹敵する超伝導薄膜は、機器応用にはもちろんのこと超伝導の物性解明に重要なものである。しかしながら、PLD法といった従来の線材作製方法では単結晶に匹敵する薄膜作製は非常に困難である。

PLD法に変わる手法としてLPE法が用いられてきたが、デメリットとして膜厚制御が困難な点や比較的高温環境が必要な点が挙げられる。このデメリットを改善するために、REBCOの熱力学的状態図を考慮した単結晶作製方法が考案された(これがVLS成長法である)。

検証しようとしている仮説

Fig.1にはBa3Cu5Ox(BCO)とNdBa2Cu3O7-y (NdBCO)の擬二元状態図が示されている。この状態図から、BCO液相にNdBCOを供給することにより、NdBCO単結晶の成長が示唆される。

本研究では上記手法でNdBCO薄膜が成長するか検証を行っている。

仮説の検証方法

以下3STEPを踏んで薄膜作製を行い、仮説の検証を行った。

solid相(固相)の作製

STO単結晶基板上にPLD法を用いて10 nm膜厚のNdBCOを作製。基板温度は800℃である。

Liquid相(液相)の作製

STEP.1で作製されたSolid相上にBCO液相を60 nm作製。基板温度は800℃である。

Vapor相(気相)からNdBCOを供給

STEP.2で作製されたLiquid相を介して、PLD法を用いてNdBCOを供給。基板温度は同様に800℃である。

BCO液相の除去

成膜後、BCO液相材料が固化し薄膜表面に残るので、0.1 wt.%のブロモメタノールを用いてBCO液相のエッチングを施した。

得られた薄膜の結晶配向性等のデータは、XRD, SEM, AFMを用いて評価された。

得られた結果

Fig. 2 (a)には成膜後の断面TEM像、Fig. 2 (c)はその薄膜のXRD回折パターンが図示されている。TEM像からBaCuO2やCu2Oといった液相残渣が確認され、XRDパターンにおいても、そのピークが確認されている。

Fig. 2 (b)には表面を0.1 wt.%のブロモメタノールエッチングした後の断面TEM像、Fig. 2(d)にはその薄膜のXRD回折パターンが図示されている。エッチング後は液相残渣が消え、XRDパターンでもNdBCOの回折ピークのみが確認されている。

Fig. 3にはPLD法で作製された薄膜の断面TEM像(Fig. 3 (a))、及びTPE法で作製された薄膜の断面TEM像(Fig.3 (b))が図示されている。PLD法においては積層欠陥等が多く確認されたが、TPE法ではそのような欠陥が確認されず、単結晶に匹敵する薄膜作製が可能となった。

Fig. 4にはTPE法で作製された薄膜の表面AFM像が図示されている。1.2 nmのステップが観測され、この値はNdBCOの単原子層の厚みと一致している。また非常に広いテラス幅も同時に確認された。これは熱平衡状態時に固液界面で成長することが確認されている。

得られた結果に対する解釈

TPE薄膜を酸素アニールした際、クラックを伴った斜方晶相がSTO基板の[100]面と[010]面に形成された。この結果はLPE法で作製された結果と類似しており、TPE法が高い結晶配向性が示唆されている。

300℃で200 h酸素アニールを行っても酸素が十分に拡散していないことがXRD等から確認されており、この結果から考えてもTPE法の薄膜が高い結晶配向性を有している可能性が高い。